■広告FAX

エクスメディオ社がヒフミル君というiPhoneアプリが公開されました。

皮膚の写真をとると、皮膚科のDrにアドバイスしていただけるアプリです。

Androidアプリは現在のところないのですが、パソコンのブラウザからも利用できるようなったので、多くの人が利用可能でしょう。

私はこのアプリはクリニックへの広告FAXで知りました。

広告FAX、広告メールはどうしてもうさんくさい印象を持ってしまいますが、しっかりしたメンバーのベンチャー企業のようです。

公式サイトには設立者の精神科医師のコメントがのっています。

"診療所では医師は一人で戦っています。また特に地方では病院ですら医者不足のため一人で戦っている医師がたくさんいます。"

"そんな日々の診療上の疑問を‘ツイッター’のような感じで気軽に聞けるサービスがあったらなぁ"

まさに私が日々思っていることで共感できます。




■皮膚科医に気を遣っている

皮膚科の患者数が必ずしも減るわけではないと、ホームページでアピールされています。

皮膚科の経営者に気を配っているんでしょうね。



個人的にはこのアプリが広がっても患者数に大きな変化はないように予想します。

ヒフミル君のアドバイスと皮膚科医の診察とはずいぶんと違うと思いますから。


■近未来の医療

アプリを用いた診断は広がりつつあるようです。

ヒフミル君は医師が依頼して、医師がアドバイスするアプリです。

同様のアプリないか少し調べてみると、患者が依頼して、コンピューターがアドバイスするアプリは英語ならすでにたくさんあります。

(医師に医師がアドバイスするソフトはみつけられませんでした)

BMJには「Evaluation of symptom checkers for self diagnosis and triage」なんて論文もあります。

やはり正確とはいえないようで、過少診断により治療が遅れてしまうトラブルが予想されます。

しかし、これはほぼ自由に医療機関を受診できる日本人的発想ですね。

医療機関へのアクセスが困難な国の人にはありがたいサービスです。

①医療機関>②診断アプリ>③自己判断 の順に有効でしょうから、日本では ②診断アプリ は ①医療機関 に劣るという相対評価になってしまいがちですが、海外では ②診断アプリ が ③自己判断 より優れているという相対評価になりうると思います。

私は内科の開業医ですが、このようなアプリが広がっても、当院の経営上は全く問題ないと思っています。

私は特に優秀な医師ではありませんが、①医療機関>>>>>②診断アプリと思うのです。

私は以前からどんな症状なら医療機関を受診すべきか義務教育で教えるべきだと思っています。

「どうしてここまで放置したんだ」と思うことも、「これぐらいで受診しないでいいのになぁ」と思うことも日々あります。


■ヒフミル君を使ってみて

実際にヒフミル君を使ってみました。

2例使ってみたのですが、1日以内にアドバイスいただけました。

うち1例は(悪性度の高くない)悪性腫瘍の疑いがあるとのアドバイスでした。

隣り町の皮膚科にいってもらうには半日かかってしまう高齢者でしたが、自信をもって皮膚科受診をアドバイスできました。

さっそく患者利益につながったと思います。


■無料なのはありがたいですが

無料なので申し訳なく思います。

収益をあげるプランがあるのか心配です。

他の業種でありそうなパターンといえば、製薬会社や皮膚科クリニックの広告で収益をあげることでしょうか。

ただ医師は、診断(アドバイス)にfeeが発生するのは当然のことと思っているので、有料プランでもいい気がします。

部外者が口をだすことではありませんが、例えば毎月1症例は無料で、以後は有料といった課金方法でもいいかもしれません。


■将来的には

将来的には、他の画像診断にも広がってほしいです。

例えば、単純X線や心電図です。

放射線科医師による遠隔診断はすでに普通に行われています。

CT、MRIなどの契約が主で、単純X線の遠隔診断を契約している医療機関は少ないと思います。

しかしながら他の医師の意見をきいてみたいこともあるので、広がってほしいものです。

ヒフミル君にデータが蓄積されていけば、皮膚所見の画像データベースでできますね。

写真のプライバシーがどうなるかが気にはなりますが。
(今のところ、私は患者の顔がうつった写真は送らないことにしています)

さらにデータが蓄積されていけば、類似画像をコンピューターが表示したり、コンピューターが診断アドバイスするようになるのかもしれません。


■参考

●ヒフミル君

●ExMedio

●BMJ~Evaluation of symptom checkers for self diagnosis and triage: audit study
"Performance varied across symptom checkers. Listing the correct diagnosis first in standardized patient evaluations ranged from 5% for MEDoctor (95% confidence interval 0% to 13%) to 50% for DocResponse (33% to 67%). Few differences were observed by the symptom checkers’ characteristics ."



(2015/08/09)