SRI一橋大学消費者購買指数
■2%の物価上昇を目標にすることの是非
デフレ脱却を目指し量的・質的金融緩和を行っている黒田総裁率いる日銀。
経済状況好転の結果の2%の物価上昇ならすばらしいことでしょう。
しかし2%の物価上昇を目標にしているのに違和感を感じる人が多いでしょう。
物価上昇を目標にすることの理由づけとしては、「モノやサービスの価格が上がることが予想されれば、人々は価格が上がる前に買っておこうと行動するようになるので消費は活性化する」といったことでしょうか。
一般消費者の感覚として、消費税増税直前などの状況を除いて、「値上がりをみこして節約のために多く買い物する」なんて行動はあってもわずかだと思います。
それどころか、将来の購買力低下に備えて、今のうちから節約しておくという行動になると思います。
■すでに物価は上昇しつつある?
さて原油安もあって2%の物価上昇という目標達成が難しいという報道が最近目立ってきました。
反面物価が上昇して生活が苦しくなったという消費者の実感に基づいた報道も増えてきました。
どうして物価が上がっているのか、下がっているのかの意見が分かれるのか。
どうも物価の評価するにあたって物価指数というものに問題がありそうです。
日本銀行が目標としているのは消費者物価指数のようです。
物価指数には下記のような難しさがあるようです。
・「アイスクリームを120ミリリットルから110ミリリットルに減らして、名前を変えて新商品として売る。」といった値上げを反映できるか。
・デパートで購入していたものと同じ商品を、ディスカウント店で購入した場合、どう評価するか。
・キリンビールとアサヒビールを同じ価格で1本ずつ買うとする。翌年、キリンの価格が 2 倍になり、アサヒの価格が半分になったとする。たいていの消費者はアサヒビールを買うようになり、物価は下がったと感じる。しかし消費者物価指数では(2 + 0.5) ÷ 2=1.25で25%の物価上昇となってしまう。
上方バイアス、下方バイアスともあるようですが、下方バイアスが大きいという結果になるのが、SRI一橋大学消費者購買指数です。
すなわちすでに物価は上昇している可能性もあるといえ、一般消費者の感覚と合致します。
■インフレの分類
すでにインフレになっていると仮定して、そのことにより景気回復しているといえるのでしょうか。
そうとはいえません。
景気回復によらないインフレも多々あります。
種々のインフレを列挙してみます。
・デマンドプルインフレーション(demand-pull inflation)=需要インフレーション
・コストプッシュ・インフレーション(cost-push inflation)=供給インフレーション
・コストインフレーション
・構造インフレーション
・輸出インフレーション
・キャッチアップインフレーション
・財政インフレーション
・信用インフレーション
・為替インフレーション
景気回復による「デマンドプルインフレーション」の要素よりも、「財政インフレーション」「為替インフレーション」の要素が大きいように感じます。
というわけで、日経平均20000越えなどと浮かれた記事も多いですが、私は日本経済の状況はアベノミクスの前よりは回復しているとは思いますが、本格的な回復には至っていないと思います。
アベノミクス3本の矢「金融政策」「財政政策」「成長戦略」の三番目の矢が機能しない限り、どの国の経済も回復しない気がします。
そして3番目の矢が機能するかどうかは、国民が頑張るかどうかにかかっていると思います。
■参考
●Bloomberg 実質値上げ犯人か、物価指数と実感の差-鍵は「一橋物価指数」
●「SRI一橋大学消費者購買指数」の概要
●消費者物価指数wiki
●消費者物価指数の信頼性 美添泰人
(2015/04/14)
April 14th, 2015