■教育経済学とは

「学力」の経済学 中室 牧子 (著) 2015/6/18
という本を読みました。

教育経済学がご専門の大学の先生が書かれた本です。

Wikipeniaで教育経済学を調べてみますと、「教育経済学で取り扱われる問題としては、教育の経済的効果、教育の費用負担、教育における効率性と教育計画、教育の便益に関する分析が主である」とあります。

教育経済学の言葉から私がイメージする通りの学問ですね。

ただ本書では、「ほめて育てるべきかどうか」という「経済」っぽくないテーマまで教育経済学のテーマとして扱っています。

経験ではなく統計学的な手法で教育方針を決めることを、経済的な問題かどうかにかかわらず、教育経済学としているようです。

どのテーマが教育経済学の対象かということには私にはあまり関係ない話ですが、少し気になりました。


■因果関係

因果関係、相関関係、みせかけの相関関係について触れらています。

「親の年収や学歴が低くても学力が高い児童の特徴は、家庭で読書していること」というデータがあるそうです。

ただ、そのデータだけでは、子供に読書をさせることが学力の向上につながる(因果関係)とはいえません。

学力の高い子供が読書を好むというだけかもしれませんからね(相関関係)。

さらには教育熱心な親だと、子供に勉強させるので学力が高く、また読書もさせるというだけかもしれません(みせかけの相関関係)

統計学の知識がないと、教育に限らず人生において選択肢を誤ってしまいがちですから、高校生ぐらいになったら統計学について子供に勉強させようと思います。

■ご褒美は悪くない

ご褒美を与えるべきや悩んでいる親は多いと思います。

"ご褒美が子どもの「一生懸命勉強するのが楽しい」という気持ちを失わせてはいなかった"

"ご褒美は「テストの点数」などのアウトプットではなく、「本を読む」「宿題をする」などのインプットに対して与えるべき"

"子供が小さいうちは、トロフィーのように、子どものやる気を刺激するような、お金以外のご褒美を与えるのがよいでしょう"

"ご褒美にお金を得た子どもたちは、お金を無駄遣いするどころか、きちんと貯蓄し、娯楽や衣服、食べ物に対して使うお金を減らすなど、より堅実なお金の使い方をしていたことが明らかになりました。この実験では、ご褒美と一緒に、貯蓄用の銀行口座を作ったり、家計簿をつけるなどの金融教育が同時に行われていたことも一因だと考えられます。"

私はご褒美に抵抗が少しあったのですが、ご褒美もあげることにしました。

とりあえず、夜のおやつを勉強のご褒美としてあげることにしました。

夕食→おやつ→風呂→勉強 という順番だったのを、夕食→風呂→勉強→おやつ という順番にして、おやつは勉強のご褒美ということにしました。

■重要な非認知能力「自制心」「やり抜く力」

本書では、学校のお勉強を認知能力とよんでいます。

学校のお勉強を教科学習ということもありますよね。

どう違うかは私には追求する気力はありません。

いずれにしろ、学校のお勉強、認知能力、教科学習以外の能力が、人生においては重要です。

本書では、そのような能力を非認知能力と呼び、重要で伸ばすことができるものを2つ紹介しています。

「自制心」と「やり抜く力」です。

自制心は筋肉のように、継続を反復によって鍛えられます。

細かく計画を立て、記録し、達成度を自分で管理することが自制心を鍛えるのに有効だそうです。

やり抜く力は、「能力は生まれついたものではなく、努力によって後天的に伸ばすことができる」と子どもにメッセージを送ることにより強くなるそうです。

結果よりも、努力したことをほめる私の教育方針と合致しているので、うれしいです。


■学力テスト

学力テストの公開については著者は否定的です。

私は漠然と公開すればいいと思っていました。

ただ、その学区の状況を示すデータを紐づけて公開しないと、その学校の能力を反映していると勘違いされるという問題が生じるようです。

"順位を公表するなら、学校名だけではなく、その学区の生活保護率、就学援助率、学習塾等事業者の数や売り上げなど、家庭の資源を表す情報も紐づけて公表すべきです"

県別の学力テストの順位はすでに公開されています。

県別の順位も、学力テストをうけない私立小学校在籍者の比率が高い東京、神奈川、高知、奈良、京都では低く出てしまうようです。


■個性

教育においても、医療と同じように、証拠、データに基づいて方針を決めることは重要です。

ただ、教育でも医療でも個性がありますから、個人差をどこまで見守るかは悩ましいところではあります。


■参考

●Wikipedia~教育経済学

●Amazon~「学力」の経済学

『統計学が最強の学問である』 からの引用 "自分が病気になったときに、まず長生きしているだけの老人に長寿の秘訣を聞きに行く人はいないのに、子供の成績に悩む親が、子供を全員東大に入れた老婆の体験記を買う、という現象が起こるのは奇妙な事態だとは思わないだろうか"

"学力が高いという「原因」が、自尊心が高いという「結果をもたらしている」"

"努力した内容をほめられた子どもたちは、2回目、3回目のテストでも粘り強く、問題を解こうとと挑戦を続けました。…能力をほめることは、子どものやる気を蝕む"

"1日に1時間程度のテレビ視聴やゲーム使用が子どもの発達に与える影響は(ない)"

"「勉強を見ている」または「勉強する時間を決めて守らせている」という、親が自分の時間を何らかの形で犠牲にせざるを得ないような手間暇のかかるかかわりというのはかなり効果が高い"

"社会収益率が7~10%にも上るということは、4歳のときに投資した100円が、65歳の時に6000円から3万円ほどになって社会に還元されているということです。"

"ペリー幼稚園プログラムのよって改善されたのは「非認知スキル」または「非認知能力」と呼ばれるものでした。これは、IQや学力テストで計測される認知能力とは違い、「忍耐力がある」とか「社会性がある」とか、「意欲的である」といった、人間の気質や性格的な特徴のようなものを指します。"

●TED~アンジェラ・リー・ダックワース 「成功のカギは、やり抜く力」



(2015/09/03)